天使と悪魔の記録

 

生まれる!その1

こなつの予定日は4月13日だったが、
3月の中ごろから前駆陣痛がきていた。
お腹が痛いわけではないのだが、子宮の収縮が定期的に起こっているらしい。
もう、いつ生まれても大丈夫は大丈夫なのだが、
やはりなるべくならぎりぎりまでお腹の中で育てたい。
それにエコーで計ると、赤ちゃんはまだ2200gに足らないくらい。
まだ小さすぎる…。私はまた安静期間に入った(不正出血、妊娠中毒症に続いて
三回目)。
私自身が3月生まれなので、できれば3月生まれは避けたかった。
小さく生まれたうえに(今も小さいけど)、早生まれの私は万事みんなについて
いけなかった。
運動能力でなんとか追いつけたのは、小学校3年生だった。
(今は、同級生より一つ若くて得してるけど(*^^*))
やっぱり親としては、それは避けたい…。

夫も私の意見に賛同してくれ、家にいられるときの家事は全部引き受けてくれた。
掃除、洗濯、ゴミだし、蒲団あげetc…。
(この時の効果は今も続いていて、休日家事を手伝ってくれる。
現在妊婦の方、夫教育にこの時期を逃してはいけない)

三食昼寝付きの良い身分で、誰にも文句を言われない。
あぁ、妊婦やっててよかった♪

そうこうしているうちに4月を迎えたが、徴候は現れない。
もういつ生まれてもいいので、散歩などを始めた。
しかし、お腹は張るし、足はつる。
いつもなら、10分で行けるところに30分かかった。
お腹の大きな女が少し歩いては、辛そうに立ち止まる。
通りすがる人は、私を大きくを避けて通りすぎる。
そりゃあそうだろうなあ…。いきなり、
「う、生まれる!」と、叫ばれたらいやだよね(笑)。やらなかったけど、ちっと
やりたかったな。

予定日の検診で
「もうそろそろですね。あと、2,3日。」
と、I先生がおっしゃった。
いざとなると結構不安になる。
痛そうだなあ…とか、無事に生まれるだろうかとか、色々なことが頭をよぎる。

帝王切開になったら大変そうだけど痛くないんだろうか、なんてばかなことも考
えた。
私には母親がいないので、義母がいてくれたおかげでずいぶん助かった。
義母は3人も産んだベテラン。不安な私に、
「勝手に生まれてくるから、心配したってしょうがないわよ。
陣痛が始まったら、産むしかないんだからさあ。」と、声も高らかに笑いながら
言う。
そんなもんなんだろうけど…。
先に母親になった友人達も、
「何だか知らないうちに生まれたよ。」と、いとも簡単に言う。
そうだよなあ、子供の意志で生まれてくるんだもんなあ。
でも、不安不安…。

4月15日の早朝。何だかお腹が痛い。
病院では「10分間隔になったら来てください。」と、言われていた。
まだ、間隔ははっきりしていない。でも、出血の量が異常に多い。
病院に電話すると、「すぐに、おいでください。」との事だったので、
夫を叩き起こし、車で病院へ連れて行ってもらった。

産婦人科病棟に行くと担当のI先生がまだおられず、T先生が診てくださった。
「うーん、もうすぐだけど、今日ってことはないから一度帰っていいですよ。」
と、言う。
帰れって言われたってさーーー!
もう、産まれそうだって言ってきちゃったし、こんなに出血してるんですぜー!

私はこのまま帰って、待たすぐ痛くなったって嫌だし…、と途方に暮れていると、
ちょうどI先生がおいでになった。もう一度診ていただくと、
「出血も多いし、今日産んじゃいましょう。」とおっしゃった。
「産んじゃうって言ったって…。」と私が言うと、
「極微量に、促進剤を使いましょう。」と先生。
「促進剤ーーーー!」あの悪名高き促進剤!と、
思いっきり悪い先入観丸出しの私の気持ちを察して、
促進剤の安全性、効用などを説明してくださり、
「今日、産んだほうが安全です。」と、きっぱりおっしゃった。
あぁ、今日やっと赤ちゃんに会えると思うと私も何だかとっても嬉しくなり、
「先生お願いします。」と、促進剤の使用に承諾した。

このD国立病院は新しく建て替えたばかりで、産科はLDR方式の産室体系をとっていた。
普通、産院では陣痛室と分娩室が分かれているのだが、
この病院では陣痛室がそのまま分娩室になる。
べッドが、分娩台に早変わりするらしい。
アメリカから導入された方式で、要するに自宅の部屋のようにくつろいで産むっ
て事らしい。
確かにお部屋は、ホテルみたいで快適だ。

部屋がそのまま産室になるため、無菌状態を保つために着替えをする。
夫には、白衣が渡された。
早速、着込む夫。

…小学校の給食委員だ…。
私は、かっぽう着姿の夫がおかしくておかしくて、げらげら笑った。
いたーい!笑うと痛い!でも、おかしい!
痛いのと、おかしいのが合わさって涙が出た…。

O先生が点滴を持ってきた。促進剤だ。

さあ、いよいよ出産までのカウントダウンが始まった。

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