天使と悪魔の記録

 

生まれる!その2

点滴が身体に入り込むと、どんどんお腹が痛くなる…。
生理痛+下痢痛×50くらいの痛み…。

痛みが増すと「ひっひっひ、ふー」と、習った呼吸法をする。
気休め程度に、効いてる気もする。何でも、信じやすい単純な性格が幸い。
普通、陣痛というのは間欠期とか言って、痛くない時間がほんの少し間に入る。

痛い痛いものすごく痛い、少し痛いの繰り返しらしい。
でも、私の場合は薬を使っているのでずっと痛い。
痛い痛いものすごく痛い、まだ痛いずっと痛い∞。

かれこれこの時間が3時間は続いている…。
夫を見ると、かっぽう着を着て、私の昼食を食べている。
なんてまぬけな図だろう…。私がこんなに痛いのに、物なんか食うな!
助産婦さんが入ってきて、腰をさすってくれる。あぁ、少し楽だあ…。
帰り際、かっぽう着姿の夫を見てクスリと笑った。
「なんか、オレ見て笑っていったよ…。」と、夫。
その姿見たら、誰でも笑うさ。
助産婦さんが腰をさすってくれたのを見て、夫も少しさすってくれる。
そこじゃないんだよ…。もっと、右、違う違う…。
そう言いたかったんだけど、それなりに一生懸命のつもりの夫にはやはり言えない…。
この時は、生理痛+下痢痛×100くらいの痛み。
痛みにはかなり我慢強い私も、休みのない痛みでかなりグロッキー。
助産婦さんにクスリを少し止めてもらうように頼んだ。
助産婦さんも、気の毒に思ったのか薬を止めてくださった。
そこへ、 I先生の登場。
「休んだら駄目だよ。」
ち、ちしょー(;_;)。少しくらい休ませろよ…。
あまりに情けない顔をしていたのか、I先生は
「そんな気の弱い顔してたら駄目だ!産んでやるって言うくらいの気持ちになりなさい!」
と、冷たく言い放つ。
てめえ!産んだことあるのかよーーーーー!!!!!
でも、I先生は産科の部長先生。とっても偉い先生。かすかな理性が、私の口を塞いだ…。

結局、ほんの数分休んだだけで、また生理痛+下痢痛×200くらいの痛み…。

傍らに、お産までの時間がファイルになっておいてある。それを見ると、
出産までの時間はここから約12時間。
後12時間この痛みが続いたら、気を失う…。

夫は気楽だよなあ…(怒)。本なんか読むなよ(怒)。物食べるな(怒)。テレビなん
か見るな(怒)。
笑うな!しゃべるな!こっち見るなーーーーーー!!!!!!!
夫のやることなすこと、とにかく腹が立つ!
でも、夫に八つ当たりしたって、この痛みはなくならない。

そのうち、夫が会社に少しだけ行くと言い出した。
助産婦さんに聞くと、この分なら出産は夕方になるとのこと。
居たって役に立たないし、夫を会社へ送りだす。
生理痛+下痢痛×300くらいの痛み…。でも、まだ我慢できる…。
あんな夫でも居るといないとじゃ、ずいぶん違う。
不安を抱えて30分経過。

っと、突然っぐわぁあああーーーーー!!!!!と、
ものすごい痛みが襲ってきた。これは、ちょっとがんできない!
なんだ、これーーーーーー!骨盤がぎしぎししなる。
う、生まれそうだーーーーーーー!
急いでナースコールを押す。
「生まれそうです、もうでそう!」叫ぶ私に
「まだまだよ、でも一応見てみましょうね。」と、助産婦さん。
でも、診察したとたん
「あら、大変、もう破水してる!先生呼んでくるわね。」
ちょっと、そんな暇無いよー!もう、産まれちゃうよーーーーーー!!!!!
そのうちに、もう一人の助産婦さんも駆けつけ、ベッドを分娩台に組み替え始める。
「あれ?これどうだったかしら?」
どうやら、組立方がわからないらしい。
「もう、産まれます、早くしてーーーー!!」
この時ばかりは私も叫んだ。
「大丈夫ですよ。」と、まだのんびりあれやこれや動かす助産婦さん達。
「早くしてーーーーーーーー!!!!!!」
もう、私は恥も外聞もない。
ようやく組立終わり、先生も到着。
やっと、産める!

陣痛がやってくる事にいきむ。
「もう少しですよ、頑張って!」助産婦さんの声。
何度か繰り返すうちに、赤ちゃんの心音が小さくなった。
呼吸器が付けられる。
「赤ちゃんに、酸素が足りていませんよ、頑張って、いきんでね。」
私は、気が遠くなりそうだった。気を失いかけた瞬間、
「このままじゃ、赤ちゃんが息できないわよ!」
と、助産婦さんの声が聞こえた。
よし、次の陣痛で産むぞ、と私も渾身の力を振り絞った。
おぎゃあ、おぎゃあ!!!!!
やった、産まれた!
でも、先生達の様子がおかしい。
「なんで、こんなに出血が多いんだ?」
「赤ちゃんを早く、早く!」
私に赤ちゃんを見せてるれない。
「どっちですか?無事ですか?」
私の問い掛けに
「あ、女の子ですよ。」と見せてくださった。
それも一瞬で
「赤ちゃん、お産の時間がかかって、低体温なんです。すぐに暖めますから。」
と、連れて行ってしまった。
不安不安不安…。
義母が、ちょうど来てくれた。いくらか、不安も紛れる。
約30分後、やっと赤ちゃんを連れてきてくれた。
目がぱっちりしていてとってもかわいい!あぁ、嬉しい!
私のところに生まれてきてくれてありがとう。
ほんの少し抱かせてもらって、こなつはすぐに保育器に入れられた。
「ちょっと、産道にいる時間がながくなって、低体温だったの。
身体の色が真っ白で生まれてきちゃったから、少し体温調節しますね。」
と、説明してくださった。
エコーで、大体生まれてくるときの大きさを計ると2700gだったが、
実際に生まれてみると3280gもあり、身体の小さい私には大きすぎたらしかった。
私の産道も傷だらけ(;_;)。6針縫った。
でも、総時間8時間。安産だった。あんなに痛くても、安産(笑)。
38時間苦しむ人もいるのだ。やっぱり安産だったな。

先生が
「ご主人は?」と、おっしゃった。
「今までいたんですが、ほんの少し前に会社に戻ったんです。」
「そういうもんなんだよなあ、男は本当に役に立たないね。」
と、笑っておっしゃった。
先生も男だけどさ…。

とにかく、無事に産まれた。全てに感謝したい気持ち。とにかく、嬉しかった。

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