天使と悪魔の記録

 

8人斬り

その日は、ポカポカ陽気の公園日和だった。
いつものようにお砂場セットをもって、こなつと自転車でK公園へ向かう。
公園の一歩手前で、いつも立ち止まる。
「今日は、お友達泣かせないでね。おもちゃ貸してねって、言ったらかすんだよ。
優しくするんだよ。」
くどいほど、こなつに言い聞かせる。
ほんとはこんなこと言いたくないんだけど、
必ず泣かすもんだからつい口うるさく言ってしまう。
このころ私の憧れの言葉は、
「気にしないで、子供同士のことだから。この子は弱いから、
少しくらい泣かされたほうが良いのよー。」だった。
一度で良いから、その言葉を言いたかった!
せめて「ごめんなさい、ごめんねー。」って、
言わなくてもいい日が欲しかったのよ…。
一方、当のこなつは
「うん、なかさなーい!仲良くするー♪」と、公園に行きたい一心で調子よく約束する。
今日のこの天気じゃ、公園は大賑わいだ。
何かいやな予感がする…。

公園に着くと早速、こなつはお砂場へ行く。
いつも遊んでいる、 MEちゃん、RKくん、EMちゃん、KOちゃんの顔が見える。
最初は、穏やかに遊んでいた。
おもちゃの貸し借りも、珍しくみんな上手だ。
そのうちRKくんが、こなつのスコップを使いだした。
こなつは他のスコップを使っていても、
自分のものが他の子に使われると、とたんに惜しくなる。
「だめー!それこなつの!」
RKも少し前までこなつの言いなりだったが、
2歳を過ぎてだんだん男の子らしくなり、こなつと対等にやり合うようになった。
「貸して!」とRK。
「だめー!」とこなつ。こうなるともう手が付けられない。
こなつはRKからむりやりスコップを奪い取る。
RK大泣き、まず一人。
スコップを奪い去って逃げるとき、KOちゃんの作ったお砂のプリンを壊す。
KOちゃん大泣き、二人目。
そのスコップを取ろうとした少し大きめのお兄ちゃんを突き飛ばして、三人目。

走り出したこなつを追いかけたEMちゃんに
「来るなー!」と叫び4人目。
興奮して、スコップをもって走り回るこなつ。追いかける母…。
面白がってこなつに続いて走る、MEちゃんが転んだ。
追い撃ちかけるように、転んだMEちゃんの上に覆いかぶさるこなつ。
これで、五人目。

ようやく落ち着いて、ぶらんこで遊び始める。
こなつの乗るぶらんこを、幼稚園くらいのお兄ちゃんが横取りしようとした。
「やめろー!」と突き飛ばして六人目。
おやつの取り合いで、七人目。
EMちゃんを泣かしたお姉ちゃんを突き飛ばして八人目…。

今までは最高6人だったから、本日嬉しくない新記録達成…。
私は頭を下げ続けて脳味噌がシャッフルされ、ほとんど脳震盪状態…。

頼むから、誰かこなつを倒してくれ!下克上を起こしてくれ〜〜〜!

この日を境に、泣かした子の数を数えるのはやめた…。

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