天使と悪魔の記録

 

秋の夕暮れ。

こなつはおならが好きだ。
誰かがおならをすると、どこで何をしていてもすっ飛んで匂いを嗅ぎに行く。
「うわぁー、くっせー!ぎゃはははははははー!」
…嫌なやつだ。
自分がおならをすると、
「嗅いでー、嗅いでー、ほらくっさいよーーー、臭いでしょう!ぎゃははははは
ー!」
…心の底から嫌なやつだ。

だから晩秋のK公園で銀杏を見つけたとき、嫌な予感がした。
お友達とさんざんK公園で遊び、みんなは疲れて先に帰ったのだが、
パワーが有り余っているこなつは遊び足りず、仕方なしに二人でのんびり散歩し
ていたのだ。

そこで、銀杏との初めての遭遇。

「おかあさーん、変な匂いするねえ。」
早くも、こなつは嬉しそうだ。
「銀杏って言うんだよ、触るとかゆくなるからやめな。
それよりさ、向こうに遊び場があるから行こうよ。」
私は何とか銀杏から、こなつの注意をそらそうとした。
「ちょっと待ってよ、お母さん、これ変なにおーい、がははははー。」
駄目だ、もう完全に銀杏の虜だ…。

私はとりあえず、こなつから少し離れたベンチに座った。
こなつは地面に鼻を擦り付けるようにして、匂いを嗅いでいる。
(もう、やめろよ…。)
「くっせーーーー!、おかあさーんこれ臭いよーーー!」
こなつは、ますます嬉しそうだ。
「くっせーーー!ぎゃははははー!」
私のところまで走ってきて、どんなに臭いか嬉しそうに話す。
(もう、やめろってばさ…。)
こなつは、また銀杏のところまで戻って匂いを嗅ぐ。
「くっせーーーー!」
「そんなに臭いならもうやめればいいじゃん。」
私の少しじれてそういうと、
「だってこれ、お母さんのお尻のにおいー!わははははー!」
でかい声で、いいやがった…。
隣のベンチで深刻そうだったカップル、落ち葉拾いをしていた品の良いご夫人、

ボールで遊んでいた親子づれ…。
それらの視線が、いっせいに私の方へ向いた。
ち、違います!私の尻はそんな変な匂いじゃありませーん!!!!!

私はそう叫ぶかわりに、こなつを抱えてその場から逃げ出した…。
来年の秋は、絶対ここへは来ないー!!近づかないぞー!そう誓いながら…
(;_;)。

(C) Copyright 2001 nachi All rights reserved. Update : 2002/09/25 Goto HOME