天使と悪魔の記録

 

こなつのうそ。

日曜の朝、こなつがうそをついた。

「歯を磨いたの?」と聞くと
「磨いたーー!!」
でも、歯ブラシが濡れていない。うそついたのは一目瞭然。
私は嘘と言い訳が大嫌い。
で、こなつを叱った。
「嘘つくのは一番悪いことだ!!
お昼まで自分の部屋で反省しなさい!!」
泣いて謝るこなつ。
でも、部屋へ行かせた。
お昼に覗くと
「もう、悪いことしません。」と、涙目。
抱きしめて
「もう、嘘つかないでね。」と、ご飯を食べた。

買い物へ行き帰ってから
「うがいしたの?」と聞くと
「したーー!!」と、ここでまた嘘をついた。
泣きたくなった。何でだろう。
徹底的に怒った。また、部屋へ行かせた。
こなつは泣いている。大きな声で。
私まで涙が出て来る。
連れがこなつの部屋へ行き、懇々と言い聞かせている。
こなつはそんな連れの言葉を聞くより
「たあちゃんここに連れてきて!!
にこにこ笑ってるたあちゃんここに連れてきて!!」
と、訴えている。
「こなつがもう嘘つかないで、
泣かなければたあちゃんここに来るよ。」
すぐにでも行って抱っこしてあげたかった。
でも、連れは
「もう少し落ち着くまで行くな。」と言う。
「君はいつも怒り方が中途半端だ。
だめって言ったら徹底しないと。
こなつは泣けば君が何でも言うこと
聞いてくれると思ってるぞ。」
確かにそう。
連れは怒り方が徹底している。
「片づけないと捨てるぞ。」と、
こなつに言って、こなつが約束を破ればその場で捨てる。
私は泣いて謝られると
「じゃあ、今度はちゃんと片づけなさいよ。」と、
わたしてしまう。
こなつは連れを恐れているが、私のことは完全に読んでいる。

しばらくしてこなつの部屋に行き
「今度嘘ついたら、お誕生日会中止するよ。」
こなつは泣きながら
「もう、嘘はつかない。」と、約束した。
でも、そのすぐあとに自分のいたずらを指摘され
「やってない。」と、嘘をついた。
私は思わず泣いてしまった。
何でだろう、私の言い方のどこが悪かったんだろう。
「あすのお誕生日会は延期ね。」
こなつに告げた。
こなつは泣いたけど、素直に延期することを認めた。

私は悩んで悩んで悩み抜いた。
連れに
「やっぱりお誕生日会はしようかな。」と、思わず言うと
「君に任せるよ。」と、笑う。
結局、私は甘いんだな。
今回は徹底してお誕生日会はやはり延期することに決める。
それでも、やっぱり悩む悩む悩む。

私に母親はいない。
父親の奥さんはいたけど、
いわゆる継子いじめでまともに
話をしてもらったこともなかった。
見本になる母親を身近に持ったことがない。
それも、いつも私の悩みの種になるのだ。
母親の愛情を知らないから、
だからちゃんとこなつを育てられないんじゃないかと。
「そんなこと関係ねえよ。」連れはいつも笑い飛ばすけど、
私の心はいつもそこに辿り着く。

思い余ってねーちゃんに電話する。
ねーちゃんはだまって私の話を聞いて、
「そんなの嘘じゃないじゃん。悪意もなにもないじゃん。
なっちが怒るから、怒られないための自己防衛だよ。
おまえは少し怒りすぎ。
子供なんだからそんなことしかたないって言うことまで怒る。
だから、こなつは怒られないように嘘をついたんだよ。
子供に、自分の理想通りになってもらおうなんて
おこがましいよ。
こなつの性格変えようなんて思わないで、
自分の性格変えなさい。
自分が理想通りの母親になれば、こなつも自然に変わるよ。
歯を磨かなかったら、
虫歯になっていたい思いをするのはこなつだよ。
うがいしなかったら、黴菌がついて病気になるんだよ。
って、そう言えば良いんだよ。
怒ることじゃないよ。」と、言い聞かされた。
ねーちゃんは私のことはいつも怒るのに、
子供を怒らない。
子供の人格を認め、子供にわかるように言い聞かせる。
私は短気だから、ねーちゃんのようには行かず手も出る。
ねーちゃんは、
「大変だけどぐっとこらえなさい。
子供の楽しみ奪うようなことはやめなさい。」
と、電話を切った。

子供は、自分の鏡なんだな。
私ががみがみ言いすぎるからいけなかったんだな。
こなつの嘘にショックを受ける前に、
自分の育て方を振り返ってみればよかったんだな。
すぐに私も変われないかも知れないけど、
少しづつ自分の理想の母親に近づけるように
努力して行こうと思う。






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