雑文林

 

新しい住み処

ちび子が我が家に来て一週間。
相変わらず、私以外(夫しかいないけど)には、身体を触らせない。
夫が触ろうとすると逃げるか、噛む。
夫の指はあっという間に、穴だらけになった。
でも、夫も猫を18年間飼っていたベテランだけに、
ほんの少しくらいの流血したって気にもとめていない。

夫は、おもちゃ作戦に出た。ペットショップで猫のおもちゃを買い集め、
ちび子をおもちゃで籠絡させようという魂胆らしい。
突っ張っていても、ちび子はこの時点でまだ生後8ヶ月。
揺れる猫じゃらしには勝てず、夫と遊ぶようになった。
そうなると、夫はますますちび子がかわいくなる。
ある晩夫が言い出した。
「ちびこって名前さー、あんまりに安易でかわいそうじゃない?
いかにも捨て猫って感じ。」
「そんなこと言ったって、ちび子はもう自分のことちび子だと思ってるんだよ。
呼べば来るんだからさー。
今更、イザベラとかしゃれた名前付けたって、覚えないよ。」
と、私。
「イザベラまで大げさな名前付けなくても良いからさ…。
えーーとねえ、うーん…。
そうだ!ちこちゃんにしよう!ちこね、ちこ。」
と、上機嫌に早速ちび子にむかってちこー!と呼んでいる。
ちび子からちこって、思いっきり安易だろうがー!
さすがに、ちび猫が女の子だからちび子って付けた義母の子だよな。
まあ、せっかく夫が考えたんだからと、
本名はちび子(病院のカルテなどの都合上)、通称はちこにすることにした。

そんなこんなで、ちこが家へ来てはや一ヶ月。
ちこが奇妙な行動をとることに気がついた。
私が掃除を始めると、掃除機の進行方向にぴたっと伏せをするのだ。
邪魔だなあと思って、方向転換するとまたぴたっと伏せる。
ががー!ぴた。ががー!ぴた。
ががががががー!!!!!
ぴたぴたぴた。
もう、邪魔でしょうがない。
「お仕置きー!」と言って、掃除機で身体を吸うと、驚いたことに
待ってましたー!とばかりに全身を投げ出す。
ががーとすうと、さも気持ち良さそうに床にごろごろ転がる。
「吸ってー、吸ってー、こっちも吸ってー、あっちも吸ってー!」
と、吸って欲しいところを掃除機の方へ持ってくる。

猫を飼った方ならわかると思うが、猫は大抵大きい音のするものが嫌いだ。
以前飼っていたラムなど、掃除機を出してくるとさっさと外へ散歩に出かけてし
まった。
珍しい猫だなあと思ったが毛梳きがこれで大分楽になり、
飼い主としては嬉しいかぎりだった。
掃除の邪魔をされるので、掃除の時間が大分長くなったけどね。

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