雑文林

 

父と母の違い。

3ヶ月もすると、ちこの表情もやっと丸くなってきた。
私たち夫婦以外の人には姿すら見せないが、
夫とも友好的になってきた。

しかし、夫と私に対する態度が露骨に違いすぎる。
たとえば、私がどこからか出かけて帰ってくる。
ちこは大急ぎで迎えに来るか、もしくは足音で察して玄関で待っている。
夫が戻る、耳が夫の方にむくだけ…。
ちこが何かいたずらをしたとする。
私が「こら!」というと、ちこは床をごろごろ転がりながらごめんなさいをする。
しかし、夫が同じように「こら!」というと、
「なにさー!あんた生意気!」とばかりに、噛むは、叩くは…。

ちこのテリトリーも大体決まってきていた。
タンスの上やワゴンの中は、完全にちこのテリトリーだ(勝手にちこが決めたん
だけど)。
タンスの上にちこが乗っていて、その下を夫が歩くと上からぼかっ!と叩く。
ワゴンの下に入っているカップ麺を夫が取ろうとすると、
どこからともなくすっ飛んできて足をがぶっ!と噛む。
あまりに夫が気の毒になって(自分が優位に立ってるからだけど)、
「ちこちゃん、おうちで一番えらいのはお父さんなんだよ。
ちこちゃんのおもちゃもご飯も、お父さんが働いてくれてるから買えるんだ
よ。」
なんて言ってみるが、もちろんちこにはお構いなしだ。

当の夫は何をされてもへこたれず、ちこを構いに行く。
で、また冷たくあしらわれる…。

あまりにその態度が違いすぎるので、獣医さんに聞いてみた。
獣医さんは、夫に対するちこの悲惨な仕打ちを聞いてげらげら笑って、
「ねこはいぬと違って、集団生活はしないんですよ。
だからねこにとっての自分以外の仲間っていうのは、お母さんねこと兄弟ねこだ
けなんです。
父親は存在しないんですね。
だからお母さんの言うことは絶対だけど、
その他は自分と同等だから言うこと聞かないんですよ。」と、説明してくださった。
つまり、ちこにとって私はお母さんだから絶対的に上位。
夫は兄弟ねこだから、自分と同等っていうことらしい
(同等っていうよりどう見ても手下って感じだけど)。
そういう獣医さんもねこを3匹飼っていらっしゃるが、
奥さんがお母さんで、先生はやはり同等に扱われているらしく、
夫にものすごく親しみを感じていた。どうりで話を聞いて笑い転げたわけだ…。

夫が、ちこから熱烈歓迎されたのは、結局私がお産で入院したときだけだった。

夫はかわいそうだけど、ちょび良い気分♪

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