雑文林

 

ねこは縁起がいい。

ちこと私の蜜月は続く。
しかし、困ったことが一つ。
私を独占したいがために、私が仕事を始めると徹底的に邪魔をする。
私の仕事は、不動産広告のコピーを書くのが主で、
初めは物件調査のために巨大な住宅地図を広げる。
すると、すかさずちこは地図ん真ん中にどーんと転がって、身体を舐め始める。

「どいてよー!」と、ちこの身体を押し出そうとしてもグンニャリ動かない…。
仕方なしにちこがいないところから計測を始めると、
私の計測先へ先回りしてしっぽを出してきたり、手を伸ばしたりする。
仕方がないので計測をあきらめてコピーを書き始めると、
鉛筆にじゃれ初め文字が書けない…。
これは、ねこを飼っている方は大抵経験しているらしい。
一説によると、ねこは集中している人のそばへ寄ってくるとか…。
エネルギーを感じるっていうことらしいが、ちこのちょっとまぬけた顔を見てい
ると、
とてもそんな能力で寄ってきているというより、ただ単純に私と遊びたいだけに
見えるのだが…。
結局私は仕事をあきらめ、ちこの相手を少ししてやり、
疲れて寝たところを見計らってまた仕事に戻ることになる。
(これって、今のこなつと同じ状態だ…。)

それでもちことの生活にすっかり満ち足りていたとき、
私は妊娠した。
当然、廻りは言い始める。
「ねこ、どうするの?」
どうするのって、どういうことなんだろう!と、私は人から言われるたびに憤慨
した。
確かに、赤ちゃんとねこが一緒に生活するのは衛生面など、
色々なことを考えて良い事ではないのかもしれない。
でも、たとえねこでも私にとっては大切な家族で、命の重さに変わりはない。
手放すつもりなんか、当然なかった。
生まれてきた子供に重篤なアレルギーがあれば、その時に考えればいいことだ。

でも、生まれくる子供と、ちこが健全に暮らせるように、
アレルギーがでる心配を極力避ける配慮はした。
たとえば、カーテンは全部外し、ロールスクリーンに変える。
毛がつくじゅうたんは敷かず、フローリングのみにする。こまめに掃除をする
等々。
念のためトキソプラズマの検査も私だけでなく、ちこもした。
結果は、私もちこもマイナスだった。

何より、私が妊娠できたのはちこのおかげだと思っている。
ちこがいてくれたおかげで、私は子供が欲しいというプレッシャーから開放され
ていた。
子供がいなくても楽しい、自然にそう思えるようになっていたのだ。
よくあきらめるとできると言われているが、それは本当のようだった。
もう子供ができなくても良いな、そう思ったとたん私の場合は妊娠した。
その意味でも、私はちこに感謝している。

私の友人にもねこを飼ったとたん、恋人ができて結婚した人がいる。
自然と、仕事運が良くなったなんて話も聞く。
私のまわりだけかもしれないけど、
ねこには幸せを運んでくれる能力があるような気がしてならない。

(C) Copyright 2001 nachi All rights reserved. Update : 2002/09/24 Goto HOME