雑文林

 

ちことこなつ

ちこはこなつと初めて対面したとき、ぎょ!!とした顔をし、しばしその場に凍りついた。
そのうちに、こなつの匂いを一心に嗅ぎ始め、偵察を始めた。
全ての確認が済むと、私とこなつを交互に見て何となく納得したのか、
いつもの自分の場所に戻った。
ねこはよく焼きもちを焼くというが、ちこに関しては大丈夫なようだった。
いくらか緊張しているようにも見えてたが、
私と夫が大切に扱っているのを見て自分なりに受け入れたようだった。

基本的に、ちこはこなつ無視していた。
変化といえば、「あそんでー」と言ってこなくなったことぐらい。
忙しく動きまわている私の様子を、観察しているようでもあった。
その頃のこなつは、夜きっかり2時間ごとの授乳だった。
私も身体のペースがこなつと同じで、2時間ごとに目を覚ましていた。
夜遅くまで働いている夫を起こすのもかわいそうで、
こなつの動く気配で目を覚まし、夜泣かせることはほとんど無かった。
ある夜、夫は深夜までの仕事でまだ帰宅していなかった。
こなつの授乳の時間とわかっていたが、私も疲れがたまっており、
こなつの目を覚ました気配にも起き上がることができなかった。
そのうちにこなつが泣きだした。
でも、いつもは起こさないようにと気を使う夫が、今日はいない。
ちょっとだけ泣かしておこうと、私は布団の中でうだうだしていた。
「おぎゃーおぎゃー(なんで今日は抱っこしてくれないんだよー、腹へったーおっぱいくれー)!」
力の限りこなつが泣いている。

と、ちこが私の顔を舐め始めた。
どうしたんだろうと私がちこを見ると、ちこはこなつと私の間を行ったり来たりしている。
それでも私が起きないと、今度ちこは私の顔を踏み始めた。
私が起き上がると、今度はちこはこなつの方へ行って私をすがりつくような顔をしてみている。
こなつが泣いてるよー、早く何とかしろー!とでも言っているようだった。

ちこにしてみれば、こなつの泣いている状況が嫌で、
早く私に、何とかして欲しかったのかもしれない。
でも、私にはちこが本気でこなつを心配しているように見えた。
何だか私は感動した。
試しに、次の夜もちょっと泣かせてみた。
すると、ちこは昨夜と同じように私を起こした。
そのうちに、昼間私がミルクやらおむつやらと、
こなつの世話をしている間中、ちこも私のあとを忙しなくついて回るようになった。
一緒になってあたふたしている様が、ほんとにおかしかった。
こなつが昼寝しているときは、こなつのそばに寄り添って一緒に寝ていた。
まるで、こなつの子守をしているようだった。

この状況は、こなつが4ヶ月ではいはいをし、
ちこを追いつめていたずらするようになるまで続いた。

現在は、こなつがちこの側を通っただけで、
バシ!っと叩くほど、ちこはこなつが嫌いだ(笑)。
でも、教えてもいないのにこなつに対してだけは、
爪も出さず、噛んでも甘がみ程度。
一応、自分より弱いと認識しているようだ。

ねこは飼い主が思っているより、頭がいい。

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